マウスピース矯正の仕組み|読めばわかる歯が動くメカニズムと治療の流れ
マウスピース矯正といえば透明の目立たないマウスピースが印象的ですよね。
治療中でも口元が目立たないため最近人気が高まってきている治療法ですが、「どうやってマウスピースで歯を動かすの?」「本当にちゃんと歯が動くの?」と思っている方も少なくないと思います。
そこで今回は、マウスピース矯正で歯が動く仕組みをわかりやすく解説していきます。
マウスピース矯正のスタートから治療が終わるまでの流れも紹介するので、これからマウスピース矯正をやってみたい方はぜひ参考にしてくださいね。
マウスピース矯正ってどんな治療?
ひとりひとりの歯型に合わせて作られたマウスピースを装着し、徐々に歯に力をかけていく矯正歯科治療です。
マウスピースが透明なため、見た目が気にならないのが大きな魅力です。
1日のほとんどの時間を装着したまま過ごす(※ブランドによって必要な装着時間は異なります)必要がありますが、自分で着け外しができ、歯みがきがしやすく、金属アレルギーがあっても治療が可能などの多くのメリットがあります。
なぜ歯は動く?マウスピース矯正の仕組み
マウスピースを装着すると、なぜ歯が動くのでしょうか?
ここでは、みなさんが興味を持っている「マウスピース矯正で歯が動く仕組み」をわかりやすく解説していきます。
そもそも歯列矯正で歯が動く原理
マウスピース矯正で歯が動く仕組みを解説する前に、まずは歯列矯正で歯が動くメカニズムを見ていきましょう。
①歯を支える土台となっているのは「歯槽骨(しそうこつ)」(という骨です。そして歯槽骨と歯根の間には「歯根膜(しこんまく)」という薄いクッションのような組織があります。
②マウスピースやワイヤーなどの矯正装置を装着すると、歯に弱い力がかかります。
すると力をかけられた側の歯根膜が縮み、力をかけた側の歯根膜は引き延ばされます。
③歯根膜には、常に一定の厚みになろうとする性質があります。
縮んだ側の歯根膜は、骨を溶かす「破骨細胞(はこつさいぼう)」を活性化して、歯根膜を元の厚みに戻します。
逆に、引き伸ばされた側の歯根膜は、骨を作る「骨芽細胞(こつがさいぼう)」を活性化して、伸びたぶんの骨を作って歯根膜を縮めます。このように歯を支える骨を溶かすことと作ることを繰り返して、徐々に歯が動いていきます。
矯正歯科治療には「マウスピース矯正」のほかに「ワイヤー矯正」がありますが、どちらも歯が動く仕組みは同じです。
ただし、矯正装置によって向いている症例や得意な動きが異なるため、患者様が自由に選ぶのではなく、歯科医師に相談したうえで治療方法を決めることになります。
マウスピース矯正で歯を動かすメカニズム
歯が動くメカニズムがわかったところで、今度はマウスピースでどのように歯を動かしていくのかを見てみましょう。
歯並びと少しズレたマウスピースを装着し少しずつ動かす
マウスピース矯正のマウスピースは、患者様の歯型を採取してひとつひとつオーダーメイドで作られます。
しかしこのマウスピースは、完全に歯型と一致しているわけではありません。
歯科医師が歯の移動距離を計算して、少し歯が動いた未来の歯列を想定して設計しています。
そのため、実際の歯型とマウスピースには少しズレがありますが、このズレは歯に力をかけて少しずつ動かしていくために必要なものです。
新しいマウスピースの着け始めは少し違和感や痛みがあるかもしれませんが、たいていは歯が馴染んでくると次第に慣れていきます。
マウスピースを交換していくことで動かしていく
1枚のマウスピースで歯を大きく動かそうとすると、歯とマウスピースに大きなズレが生じて歯に強い力がかかってしまいます。
そのため、マウスピースは複数枚製作して、歯にダメージを与えないように少しずつ動かしていきます。
どのくらいの期間で次のマウスピースに移行するかは患者様の口腔内の状態やブランドによっても異なりますが、歯科医師が作成した治療計画や実際の歯の動きを見て、決められた期間ごとに新しいマウスピースに交換していきます。
「マウスピースで歯を動かす⇒次のマウスピースに移行する⇒マウスピースで歯を動かす⇒次のマウスピースに移行する……」と段階的に歯を動かしていくのがマウスピース矯正の基本のパターンです。
◆マウスピース矯正は痛みを抑えられるって本当?
マウスピース矯正はワイヤー矯正と比べて痛みを感じにくいといわれています。
ワイヤー矯正は「ブラケット」という小さな金具のようなものを歯に取り付けてそこにワイヤーを通し、装着したワイヤーが元の形に戻ろうとする性質を利用して歯を動かす治療です。
一方のマウスピース矯正は、デジタル技術によって歯に負担がかかりすぎないよう細密に力加減を計算し、弱い力で少しずつ歯を動かせる治療です。強い力がかかりにくいため、比較的痛みを抑えやすい傾向があります。
※痛みの感じ方には個人差があります。
追加治療で歯を動かすこともある
患者様の口腔内の状態によっては、マウスピースだけで治療を進めることが難しい場合があります。
たとえば歯の大きさに対して顎が小さかったり、うまれつき歯が大きかったりする場合は、歯を動かすためのスペースが足りないことが想定されます。
そこで、歯列をキレイに並べるスペースを作るために、次のような治療を追加する場合があります。
- IPR(歯の側面を薄く削る)
- 抜歯
- 拡大床(歯列を拡大する)
また、マウスピースの矯正力だけでは、動かしたい方向や思うような力加減で歯を動かすことが難しい場合は、次のような治療を併用する場合があります。
- アタッチメント(歯の表面に小さな突起物を取り付けてその上からマウスピースを被せることで、歯にかかる圧力を高める)
- 顎間ゴム(上下の顎にゴムをかけて歯の動きやかかる力を調整する)
- スクリューインプラント(歯ぐきに小さなネジを埋め込んでワイヤーやゴムで歯を引っ張る)
いずれも矯正歯科治療では一般的におこなわれている方法ですが、かならず誰もが行うものではなく、追加治療には追加の費用もかかります。
心配な方は初回検診で歯科医師に相談することをおすすめします。
マウスピース矯正スタートから保定開始までの流れ
マウスピース矯正の仕組みがわかったところで、次は治療の流れを説明していきます。
これを読めば、マウスピース矯正の始め方から治療が終わった後にすることまで、まるごとわかりますよ!
①初回検診
マウスピース矯正は症状によっては適応外となる可能性もあります。
まずは初回検診でカウンセリングや検査を受け、適応となるかどうかを確認し、費用や治療期間の見込みなども聞いておきましょう。
一般的には、次のようなことをおこないます。
- カウンセリング
- レントゲン撮影など口腔内の検査
- 歯科医師による診察
- (適応の場合)治療方法や期間・費用の説明
初回検診の料金は、クリニックによって無料から数千円程度までさまざまです。
②治療計画に基づいて患者様にあわせたマウスピースを製作
マウスピース矯正が適応となり、治療のスタートを決めた患者様には、歯型を採取し専用のマウスピースを製作します。
マウスピースは採取した歯型とまったく同じものを作るのではなく、少し歯が動いた未来の状態に合わせて作られるため、実際の歯列とは少しズレがあります。
また、マウスピースはオーダーメイドなので、完成までには数週間程度の時間がかかります。
③治療開始
マウスピースが完成したら、いよいよ治療開始です!
治療計画通りに歯が動くよう、1日20時間以上装着することが必要(※ブランドによって装着時間は異なります)となるため、睡眠中もマウスピースを着けたままです。
歯みがきや食事のときに取り外した際は、マウスピースを装着するのを忘れないでくださいね。
④新しいマウスピースに交換
歯科医師から指示された期間が終わったら、少し歯が動いているはずです。
次のマウスピースに交換して、新たなステップに進みます。
こうしてマウスピースを交換しながら、段階的に歯を動かしていくのがマウスピース矯正の特徴です。
⑤数か月に1度クリニックを受診
定期的にクリニックに通って定期検診を受けます。
計画通りに歯が動いているかチェックしてもらいましょう。
不安に思っていることや疑問などがあれば、このときに相談するとよいでしょう。
⑥治療終了
計画したところまで歯が動いたら、矯正歯科治療は終了となります。
ただし、そのままにしていると歯が治療前の状態に戻ってしまう「後戻り」が起こる可能性があるため、治療後は歯並びを固定させる「リテーナー」という保定装置を装着します。
せっかく手に入れたキレイな歯並びを維持するためにも、リテーナーの装着を忘れないでくださいね。
仕組みが分かれば安心!マウスピース矯正でも歯はしっかり動く
矯正歯科治療で歯が動く仕組みは、思っていたより複雑だったのではないでしょうか?
歯列矯正は、矯正装置によって歯に力をかけ、骨の破壊と再生を繰り返しながら歯を動かしていく治療です。
マウスピース矯正でもこの歯が動く仕組みは、昔からあるワイヤー矯正と同じなんですよ。
また、マウスピース矯正はデジタル技術の活用により、歯にかかる力の細密な調整を行うことが可能。歯をしっかり動かしながらも、痛みを極力抑えた治療を行うことができます。
※痛みには個人差があります。
マウスピース矯正には、インビザラインやキレイライン矯正などのいくつかのブランドがあり、それぞれに特徴があります。
興味がある方は、まずは初回検診を受けて、どのような治療法が適しているのかを相談してみませんか?
※本記事は2023年5月時点での公式情報を元に編集したものです。最新の情報とは異なる可能性がありますので、ご注意ください。