マウスピース矯正は痛い?読めばわかる!痛みのタイミング・対処法・NG行動
目次
「マウスピース矯正やってみたいな」と思う一方で、「痛いのがこわい」という気持ちはありませんか?
また、「マウスピース矯正を始めたら痛くて……」という方もいるのではないでしょうか。
矯正歯科治療は多少なりとも痛みをともなう治療です。
ただ、「なぜ痛いのか」がわからないと不安ですよね。
それに、痛みを感じた時の対処法を知っていると痛みと上手く付き合えると思いませんか?
この記事では、マウスピース矯正で痛みを感じる理由や痛みを感じた時の対処法をわかりやすくお伝えしていきます。
痛みがある時に避けるべき行動と痛みを感じやすいタイミングも紹介するので、これからマウスピース矯正を始めたい方も、現在マウスピース矯正で治療中の方も、ぜひ参考にしてくださいね。
マウスピース矯正で痛いと感じる7つの理由
マウスピース矯正で治療中に痛みを感じる理由は複数あります。
まずはなぜ痛みを生じてしまうのか、その理由を見てみましょう。
理由①歯が正常に動いているから
矯正歯科治療を受けている間に痛みを感じるのはごく自然なことです。
なぜなら、矯正歯科治療で歯が動くときには、痛みを感じる原因となる物質が発生するからです。
まずは歯列矯正で歯が動くしくみを見てみましょう。
①「歯槽骨」と「歯根膜」
私たちの歯は「歯槽骨」という骨に支えられています。
そして歯根と歯槽骨の間には「歯根膜」というクッションのような組織があり、噛んだときに衝撃をやわらげる役割を担っています。
②歯根膜が引っ張られて伸縮する
マウスピースを装着して歯に力が加わると、力をかけた側の歯根膜は伸びて、その反対側の歯根膜は縮みます。
③歯根膜が元の厚さに戻る
歯根膜には一定の厚さを保とうとする性質があります。
伸びた側の歯根膜は、元の厚さに戻るために骨芽(こつが)細胞を活発にして歯槽骨を作ります。
縮んだ側の歯根膜は、元の厚さに戻るために破骨(はこつ)細胞を活発にして歯槽骨を溶かします。
④歯が動く
こうして両側の歯根膜が元の厚さに戻ると、歯槽骨が変化したぶんだけ歯が移動します。
マウスピース矯正は、新しいマウスピースに交換しながらこれを何度か繰り返していく治療です。
痛みを生じやすいのは、②③の歯根膜が伸縮し、骨が溶けるタイミングです。
この段階で歯根のあたりに炎症が起こり、痛みの原因となる物質が放出されるのです。
つまり、矯正歯科治療で正常に歯が動いていれば、痛みが発生するのは自然なことなのです。
ただし、痛みを感じないからといって歯が動いていないというわけではありません。痛みの感じ方には個人差があります。
痛みを感じるのはいつまで?死にそうなほど痛いの?
「人によっては治療中ずっと痛いこともあるの!?」と思った方もいるかもしれませんが、そうではありません。
マウスピース矯正のマウスピースは、今の歯列に完全に一致するものではなく、少し歯が動いた未来の歯列で作られます。
そのため、新しいマウスピースを装着し始めた最初の2~3日はまだ歯とマウスピースのズレが大きく、治療対象の歯に大きな負荷がかかっている状態です。
歯が動き始める際には痛みを感じやすいのですが、徐々に動いていくにしたがって、痛みや違和感にも慣れていきます。
※痛みの感じ方には個人差があります。
また、「どのくらい痛いの?」と心配する方もいますが、我慢できないほどの激痛が起こることはほとんど考えられません。
痛みの感じ方は「鈍い引っ張られるような痛み」と表現されることが多く、なかには「痛みはほとんど気にならない」という方もいます。
理由②矯正装置が歯茎や舌にあたっているから
矯正用のマウスピースは個々に合わせて精密に作られますが、まれにマウスピースやアタッチメント(歯の表面に取り付ける小さな突起)が口腔内に合っていないケースがあるようです。
合わない矯正装置を装着していると、口の中で引っかかって、歯肉や舌を傷つけることから痛みが発生します。
このような場合は我慢せず、通院中のクリニックの歯科医師に相談するとよいでしょう。
★マウスピース矯正とワイヤー矯正はどっちが痛い?
マウスピース矯正もワイヤー矯正も、矯正歯科治療で歯が動くしくみは同じです。
双方とも歯が動くことによる痛みを感じる可能性があるため、どちらがより痛いと断言することは難しいでしょう。
ただ、矯正装置が歯茎や舌にあたりにくい点や、一時的に取り外しができるという点では、マウスピース矯正のほうが痛みを感じにくいといえるでしょう。
理由③歯根膜が敏感になっているから
矯正歯科治療中は、マウスピースで歯に弱い力をかけ続けています。
圧力を受けた歯根の周りにある歯根膜が敏感になっているため、上下の歯同士があたったり、硬い食べ物を噛んだりすることでも痛みを感じることがあります。
痛みを感じたら、なるべく硬い食べ物は避け、あまり噛まなくてもよい柔らかいものを食べるようにするとよいでしょう。
理由④口腔内トラブルの可能性があるから
矯正歯科治療による痛みではなく、むし歯や歯周病、口内炎などの口腔内のトラブルから痛みを生じることもあります。
治療を始める前には口腔内に問題がなかった場合でも、マウスピースを装着したまま飲食したり、マウスピースの洗浄が不十分だったりすると、むし歯や歯周病などの口腔内トラブルをまねくことがあるのです。
ズキズキとした痛みが続くようなら、なんらかの口腔内トラブルの可能性があります。
早めに歯科医師に相談しましょう。
理由⑤顎間ゴムで歯を動かしているから
「顎間(がっかん)ゴム」とは、ワイヤーやマウスピースなどの矯正装置の上にかける医療用の輪ゴムで、歯列矯正を補助する器具のひとつです。
上顎と下顎に輪ゴムをかけて、ゴムの力を利用して矯正力を高めます。
効率よく歯を動かしたり、咬み合わせを整えたりするのに効果的で、出っ歯やすきっ歯などの治療に使われることが多いです。
しかし顎間ゴムを使うことによって歯が引っ張られる力が強くなるため、使い始めたばかりの頃は特に痛みを生じやすい傾向があります。
最初は痛みを感じても、次第に慣れていくことがほとんどです。
理由⑥歯が後戻りしたから
後戻りとは、矯正によって動いた歯が元の位置に戻ってしまうことです。
マウスピース矯正では食事や歯みがきのときにはマウスピースを外しますが、そのままうっかり長時間マウスピースを装着するのを忘れてしまったり、面倒だからとマウスピースを装着しない日があったりすると、歯が後戻りしてしまう可能性があるのです。
するとそれまで違和感なく装着していたマウスピースでも、歯並びが元に戻ったことによって、違和感や痛みを感じてしまうことも。
痛みを生じさせないためにも、治療中はかならず歯科医師から指示された装着時間を守るようにしましょう。
理由⑦治療計画通りに歯が動ききっていないから
矯正歯科治療を受けている間に痛みを感じるのはごく自然なこと、とお話ししましたが、計画通りに歯が動いていない場合でも痛みを感じることがあります。
たとえばマウスピースは歯科医師から指示された時間を守って装着する必要がありますが、マウスピースを装着するのを忘れてしまったり、決められた時間より短かったりすると、歯科医師が計画した通りに歯が動かない可能性があります。
歯が動ききっていないのに次のマウスピースに移行すると、歯に想定以上の大きな力がかかることになり、痛みを生じやすいのです。
このような場合、歯科医師の判断で1つ前のマウスピースの装着期間を延長することもあり、結果的に治療期間も長くかかってしまいます。
マウスピース矯正で痛いときの対処法
マウスピース矯正の治療中は多少の痛みをともないますが、痛みを感じたときにできることはあります。
痛みを感じたら、次の3つの対処法を試してみてください。
対処法①処方された鎮痛剤を服用する
クリニックによっては、治療中の痛みに備えて鎮痛剤を処方してくれる場合があります。
痛みがあるときは無理に我慢せず、鎮痛剤で様子をみましょう。
痛みはあくまで一時的なもの。
歯科医師から処方された鎮痛剤を飲んでいるうちに、慣れて痛みが気にならなくなることも多いです。
対処法②食事を工夫する
噛んだ際に痛いなど、歯根膜が敏感になっているために生じる痛みの場合は、食事を工夫してみましょう。
とくに新しいマウスピースを装着し始めたときは痛みを感じやすいので、食事を工夫することで痛みを軽減できることがあります。
おすすめは歯に負担がかかりにくい、次のようなメニューです。
- おかゆ
- うどん
- ハンバーグ
- 豆腐
- グラタン
- 卵料理
- 煮物
- ヨーグルト
対処法③矯正装置を調節してもらう
我慢できないほどの痛みを感じたり、長期間痛みが続いたり、マウスピースが歯茎や舌にあたったりするような場合は、マウスピースが口腔内に合っていない可能性があります。
このような場合は、通院中の歯科医院でマウスピースを調整したり削ったりできることがあります。
強い痛みや長時間痛みがある場合は、歯科医師に相談しましょう。
マウスピース矯正で痛いときに避けるべき行動
痛みが気になってついやってしまうことが、実はかえって悪循環をまねいていることがあります。
痛みがあっても、次のような行動はNGです。
マウスピースを長時間外す
痛みが気になってマウスピースを長時間外してしまうと、指定された装着時間を守れなくなります。
マウスピース矯正は歯科医師から指示された時間を守って、装着しつづけなければ効果を期待しにくくなってしまいます。
また、長時間マウスピースを外していると、せっかく動いた歯が元の位置に戻ってしまい、マウスピースを再装着したときに違和感をおぼえることもあります。
食事や歯みがきなどのために一時的にマウスピースを外すのは問題ありませんが、自己判断で長時間外すと、治療の効果を得にくくなってしまうためNGです。
鎮痛剤をむやみに服用する
鎮痛剤はクリニックで処方されることもあり、歯科医師の指示に従って服用することは問題ありません。
しかし、自己判断で市販の鎮痛剤をひんぱんに使用したり、長期間にわたって使用したりするのには注意が必要です。
矯正歯科治療は歯に人工的な力を加えて、炎症を起こすことで歯の移動を促すものですが、一部の鎮痛剤には抗炎症作用があるため、矯正歯科治療の効果を阻害するおそれがあるのです。
痛みが気になって鎮痛剤を飲みたい方は、通院中のクリニックで歯科医師に相談したうえで処方してもらうとよいでしょう。
余計な刺激を与える
歯を温めたり冷やしたりすると、その刺激から治療に支障を生じたり痛みが増したりすることがあります。また、硬いものを食べるのも避けたほうが良いでしょう。
◆歯を温める
歯を温めると血行が良くなります。
すると活発になった血流が神経を圧迫するため、痛みが増してしまいます。
◆歯を冷やす
歯を冷やすと血行が悪くなります。
血流が滞ると歯が動きにくくなるため、計画通りに治療が進まなくなるおそれがあります。
◆硬いものを食べる
矯正歯科治療中は、マウスピースによって歯に力がかかっています。
歯根が動きやすい不安定な状態に、硬いものを噛むことでさらに圧力がかかり、痛みを生じやすくなります。
マウスピース矯正で痛いと感じやすい4つのタイミング
マウスピース矯正で痛みを感じやすいのは、主に次の4つのタイミングです。
これからマウスピース矯正を始めたい方も現在マウスピース矯正で治療中の方も、ぜひこれらのタイミングに着目してみてください。
①矯正を始めたばかりのとき
初回のマウスピースを装着したときには、マウスピースの装着感や歯が動く体験自体が初めてのため、違和感や痛みを感じやすい傾向があります。また、痛みに対しての不安から、より痛みを強く感じてしまう、ということもあるようです。
しかし、次第に慣れていくことがほとんどなので、リラックスして治療に臨むことが大切です。
②食事をしているとき
食事中はマウスピースを外しますが、治療中はマウスピースの矯正力によって歯根が不安定な状態になっています。
噛むことが刺激となって、痛みを感じることがあります。
③新しいマウスピースに交換したとき
マウスピース矯正は、定期的にマウスピースを交換して少しずつ歯を動かしていく治療です。
新しいマウスピースに交換したときは歯列がまだマウスピースに合っていないため、最初の数日は痛みを感じる方が多いです。
また、歯が計画通りに移動していない場合も、マウスピースとのずれが大きいため痛みが出やすいです。
④久しぶりにマウスピースを着けたとき
食事や歯みがきの後にマウスピースを装着するのを忘れたり、マウスピースを長期間外していたりすると、歯が元の位置に戻ってしまいます。
歯が元に戻った分だけ以前より強い力がかかって、痛みを感じやすくなります。
マウスピース矯正が痛すぎる・痛くて眠れないときは我慢せず歯科医師に相談しよう
マウスピース矯正で治療する場合、過度に痛みを心配する必要はありません。
痛みを感じるのは歯が正常に動いているためであることも多く、ほとんどの痛みは一時的なものです。
痛みが気になる場合は、マウスピースが歯茎や舌に当たっていないか、口内トラブルはないか、などをチェックしてみましょう。
また、他に考えられる痛みの原因としては、次のようなものもあります。
- 矯正によって歯根膜が敏感になっている
- 顎間ゴムを使用している
- 歯が後戻りしている
- 計画通りに歯が動いていない
痛みが気になるときは、歯科医師から処方された鎮痛剤を飲むこともできますし、硬いものを避けて柔らかいものを食べるようにすることで痛みを軽減できる場合もありますよ。
ただし、まれに痛すぎると感じたり、眠れないほどの強い痛みがあったり、痛みが長引いたりするケースもあります。
このような場合は、ひとつ前のマウスピースに戻したり、マウスピースを調整したりして痛みを抑えられる可能性があります。
マウスピースを装着するのが苦痛なほどの痛みを感じたら、我慢せずに歯科医師に相談してくださいね。
※本記事は2023年5月時点での公式情報を元に編集したものです。最新の情報とは異なる可能性がありますので、ご注意ください。