アライナー矯正ってなに?治療の仕組みやワイヤー矯正との違い
目次
「歯科矯正したいな」と思って調べていると、さまざまな治療方法を目にしますよね。
アライナー矯正のほかにも『マウスピース矯正』や『ワイヤー矯正』などが出てきて、「どれがいいの?」「何が違うの?」と悩む方も多いと思います。
そんななかで、近くで見てもほとんど矯正装置が目立たないアライナー矯正は、見た目が気になる方に人気の治療法です。
あなたも「矯正は目立つイメージがあったけど、これならやってみたい!」と興味を持ったのではないでしょうか。
そこでこの記事では、アライナー矯正を初歩から紹介していきます。
「アライナー矯正って具体的にどんな治療?」
「ほかの矯正歯科治療と比べてメリットやデメリットはある?」
「私の歯並びもアライナー矯正で治療できる?」
この記事を読めば、あなたの知りたい答えが見つかりますよ!
アライナー矯正とは?
アライナー矯正とは、透明の樹脂(プラスチック)で作られたマウスピース状の矯正装置(=アライナー)を装着して、少しずつ歯に力をかけて動かす矯正歯科治療です。
矯正装置が目立たないことから人気となっている治療法で、次のような方におすすめできるんですよ。
こんな方におすすめ
- なるべく矯正しているのを知られたくない
- 矯正中も口元を気にせずおしゃれをしたい
- 人と話す仕事だから見た目が気になる
- 金属アレルギーでワイヤー矯正をするのが難しい
ちなみに、アライナー矯正について調べていると『マウスピース矯正』という言葉が出てきて、「どう違うの?」と迷う方もいるかもしれませんが、実はアライナー矯正もマウスピース矯正も同じ意味です。
どちらも透明の樹脂で作られたマウスピース(=アライナー)を装着する治療なんですよ。
アライナー矯正の仕組み
透明のアライナー(マウスピース)を装着すると、なぜ歯を動かすことができるのでしょうか?
その答えを知る前に、まずは矯正歯科治療で歯が動く仕組みを見てみましょう。
歯が動く仕組み
歯は「歯槽骨(しそうこつ)」という骨に支えられて生えています。
そして歯根部分には、歯槽骨と歯の間でクッションのような役割をしている「歯根膜(しこんまく)」という組織があります。
矯正装置(アライナー)で歯に力がかかると、押された側の歯根膜が引き伸ばされ、その反対側の歯根膜は縮みます。
歯根膜には一定の厚みを保とうとする性質があるため、縮んだ歯根膜は骨を溶かして伸び、引き伸ばされた歯根膜は骨を作って元の厚さに戻ります。
こうして歯根膜が伸び縮みしたぶんだけ、歯が移動します。
矯正歯科治療はこれを何度か繰り返して、歯を理想の位置に移動させようとする治療です。
アライナー矯正では、ひとりひとりの歯列に合わせて細密に調整したアライナーを製作します。
といっても、アライナーは現在の歯並びとまったく同じ形ではなく、少しだけ歯が動いた未来の状態を想定して作ります。
歯とわずかなズレがあるアライナーを装着すると、動かしたい歯に弱い力がかかって、上記で説明した歯根膜の伸び縮みを利用して歯を動かすことができるというわけです。
ただし、急激に歯を大きく動かそうとすると、歯にダメージを与えてしまいます。
そのため、歯を少しずつ動かせるように設計したアライナーを何枚か作って、段階的に歯を移動させていくのがアライナー矯正の仕組みです。
アライナー矯正のメリット
アライナー矯正のメリットには次のようなものがあります。
アライナー矯正のメリット
- 矯正装置が目立たない
- 飲食の際にはアライナーを外せるため、食事の制限がない
- 歯みがきのときに装置に歯ブラシが引っかからない
- 金属アレルギーがあっても治療が可能
アライナー矯正は口元が目立たないことで人気ですが、矯正装置を自分で着け外しができる点もチェックしておきたいところです。
食事のときや歯みがきのときには外せるため、装置に食べ物が引っかかる心配がなく、矯正前と同じように歯みがきもできるため、むし歯や歯周病の予防対策もしやすいのです。
アライナー矯正のデメリット
アライナー矯正のデメリット
- 決められた装着時間を守る必要がある
- 症状によっては適応外となる
- 飲食時はアライナーを外さなければならない
- 奥歯を深く噛みしめることで顎関節に影響が出ることがある
アライナー矯正で想定通りの効果を得るためには、1日のうちほとんどの時間をアライナーを装着して過ごす必要があります(※装着時間はブランドにより異なります)。
慣れるまでは違和感をおぼえやすいかもしれません。
また、歯を大きく動かす治療には向いていないため、症状によっては適応外となる可能性があります。
そして気をつけたいのは、飲食時にはアライナーを外さなければならないということ。外すたびにアライナーを洗う必要があるため、自己管理も大切になってきます。
さらには、アライナーの厚みのぶん、奥歯の咬み合わせ部分に力がかかりやすくなります。
顎に負担がかからないよう注意が必要です。
アライナー矯正とワイヤー矯正の違い
アライナー矯正(マウスピース矯正)もワイヤー矯正も、「矯正装置で歯を動かす治療」という点では同じですが、使用する装置が異なります。
アライナー矯正はアライナー(マウスピース)で治療したい歯に負荷をかけますが、ワイヤー矯正は歯の表面に取り付けた小さな金具(ブラケット)にワイヤーを通し、そのワイヤーが元の形に戻ろうとする力を利用して歯に負荷をかける治療法です。
このワイヤー矯正は歯の表側に装置を着けるのが一般的ですが、歯の裏側に矯正装置を装着する目立たない裏側矯正もあります。
そしてもうひとつ、矯正装置のほかに、治療する範囲による違いがあることも理解しておくとよいでしょう。
アライナー矯正とワイヤー矯正、どちらも治療範囲によって「部分矯正」と「全顎(全体)矯正」の2種類があります。
「部分矯正」は、前歯だけなど整えたい部分を重点的に治療する方法です。
「全顎矯正」は、咬み合わせを含めて歯列全体を治療する方法です。
アライナー矯正とワイヤー矯正の違いをまとめると次のようになります。
なお、症状などによって費用や期間は大きく異なってくるため、あくまでも目安の比較となります。
アライナー矯正の向き・不向きを解説!
ここでは、アライナー矯正が向いている人と向いていない人を紹介していきます。
「私の歯並びもアライナー矯正できるかな?」
と思っている方は参考にしてくださいね。
アライナー矯正が向いている人
アライナー矯正は次のような人に向いています。
- 歯を抜く必要がない人
- 歯の移動が比較的軽微な人
- 矯正治療後に後戻りした人
- 金属アレルギーのある人
歯を抜く必要がない人
歯をキレイに並べるためのスペースが足りない場合は、抜歯をしてスペースを作ることがあります。
しかし、アライナー矯正は抜歯をして大きく歯を動かすような症例には向きません。
前歯が少し気になる程度であれば、歯を抜かなくてもスペースを確保できる可能性が高いため、アライナー矯正が選択肢に入るでしょう。
歯の移動が比較的軽微な人
アライナー矯正は弱い力で少しずつ歯を移動させる治療です。
大きく歯を動かす必要がある症状だと対応できない場合もありますが、「前歯の小さな隙間を治療したい」「1本だけ少し向きがズレている」というように症状が軽微で、歯の移動量が比較的少なくて済む場合はアライナー矯正が向いています。
矯正治療後に後戻りした人
過去に矯正歯科治療をしても、リテーナー(保定装置)の装着期間が十分ではなかった場合などに、元の歯並びに戻ってしまう「後戻り」が起こることがあります。
このような場合、歯根は治療後からそれほど移動しておらず、歯の向きのみが傾いているケースがあります。
歯の移動距離が大きくなければ、アライナー矯正が可能と考えられます。
金属アレルギーのある人
ワイヤー矯正は金属製のワイヤーを口腔内に装着しますが、アライナー矯正のアライナーは樹脂製のため、金属アレルギーの心配はありません。
いままで「矯正したくてもワイヤーを装着できない」とあきらめていた方にもおすすめできます。
アライナー矯正が向いていない人
次のような人はアライナー矯正による治療は難しい可能性があります。
- 抜歯が必要な人
- 前歯が内側に傾斜している人
- 歯を大きく移動しなければならない人
- 歯の発育段階にある人
- 骨格的な問題がある人
抜歯が必要な人
うまれつき歯が大きかったり、歯の大きさに対して顎が小さかったりする場合は、歯を動かすスペースが足りないことがあります。
そのような場合は抜歯をして歯を動かすスペースを作ることがありますが、歯を大きく動かすことになるため、アライナー矯正には向いていません。
前歯が内側に傾斜している人
前歯が内側に傾斜している場合、その歯の歯根は外側に傾いています。
奥に引っ込んだ歯を前方に出そうとすると、歯根を歯茎側に大きく引っ込める必要があります。
アライナー矯正は歯根を大きく動かす治療には向いていないため、適応外となる可能性があります。
歯を大きく移動しなければならない人
アライナー矯正は細密に計算された距離を少しずつ移動させていく治療です。
大きく歯を動かす場合は治療期間が長くなり、そのぶん治療費もかかるため、アライナー矯正が向いているとは言えません。
歯の発育段階にある人
乳歯がまだ残っている場合は、治療中に永久歯が生えてくる可能性が考えられます。
永久歯が生え揃っていない状態でアライナーを装着すると、永久歯が生えてくるのを阻害してしまうおそれがあります。
骨格的な問題がある人
歯並びが不正になっている原因が骨格にある場合は、外科的な骨格の治療が必要となる可能性があります。
アライナー矯正にしろワイヤー矯正にしろ、矯正歯科治療では骨格の問題は解決できない場合が多いです。
アライナー矯正でトラブルはある?失敗しないためにリスクと留意点を知ろう
たまに「アライナー矯正で失敗してしまった」という話を見聞きすることがあります。
その理由として主に次のようなことが考えられます。
アライナー矯正の失敗例
- アライナー矯正に適応しない症状なのに無理に治療を進めてしまった
- 患者様の理想の歯並びと歯科医師の認識にズレがあった
- 咬み合わせに違和感を生じてしまった
- 再診料や追加治療費がかかることを理解していなかった
- 保定治療期間(動いた歯を固定するために保定装置を装着する期間)があることを知らなかった
- 自己判断で市販のアライナーを使った
アライナー矯正はどのような症状でも治療できるわけではないため、適応となるかどうかを歯科医師に判断してもらう必要があります。
また、歯みがきやマウスピースの洗浄が不十分だと、むし歯や歯周病の原因となることもあります。
このほか、1日のほとんどをアライナーを装着したまま過ごすため(※アライナーの装着時間はブランドにより異なります)、奥歯の咬み合わせ部分に強い力がかかって咬み合わせに違和感をおぼえるリスクがあることも理解しておきましょう。
これらのリスクを避けるには、歯科医師としっかりコミュニケーションをとり、事前にリスクを理解したうえで治療に臨むことが大切です。
アライナー矯正のメーカー(ブランド)によっては治療前でも相談できる窓口を設けているところもあるので、このような窓口を利用するのもおすすめですよ。
まずはクリニックでアライナー矯正に適した症状か診察してもらおう!
アライナー矯正(マウスピース矯正)は透明で目立たない矯正装置を使用するため、近年人気が高まってきている治療法です。
「こんなに目立たないのならやってみたい」
と思う方も多いと思いますが、アライナー矯正は症状によって向き・不向きがあります。
また、アライナー矯正にはメリットだけでなくデメリットもあります。
今まで通りにメイクや食事ができて、金属アレルギーでも治療が可能なのはメリットですが、アライナーの装着時間を守る必要があり、噛みしめによって顎関節に影響が出ることがあるなどのデメリットもあります。
アライナー矯正が気になる方は、まずはあなたの症状が適応となるかどうかを初回検診で歯科医師に診断してもらいましょう。
アライナー矯正以外の矯正歯科治療法も含めて、あなたに合った治療法を提案してもらえますよ。
※本記事は2024年4月時点での公式情報を元に編集したものです。最新の情報とは異なる可能性がありますので、ご注意ください。
※保険適用外の自由診療となります。